8/11/2009

エピローグ1 老いと旅

まだ纏まった考えに至っていませんが、Blogということで勘弁していただき、コメントにも期待したいと思って書きます。

今回の旅では、私以外のクルーはセーリング暦数十年、人生においても既に60歳を超えた方々です。そうした大先輩方と52フィートの空間でともに過ごしたわけですから、この問題が最初から頭の中にありました。

3人中2人の方には、今回の回航は『サラリーマンをやっていた頃には絶対できなかったこと』のひとつであり、『チャンスがあれば必ず』やってみたかったこと、だと仰っていました。

また、1人の方は、いろいろなお寺を巡礼すること、百名山をじっくりと登ること、が今の自分の生活のリズムに刻まれていると仰っていました。

数十年にわたって待っていたことが、定年(多くの日本人にとってリタイアメントよりも正しい意味を持っていると思います)を機に始動するのです。そのひとつが、出来なかった冒険への挑戦、そしてもうひとつが日常にしっかりと根ざした歴史・文化・そして自然への同化なのです。

今の私の生活場所はシリコンバレーです。様々な人が様々な形で仕事をし、成功や失敗を日々繰り返している場所です。このような場所にあっては、何かを始めるのを数十年にわたって『待つ』、そしてそのチャンスを得るために『我慢する』、ということがあまり大きな意味を持たないように見えます。日本のビジネスマンの生活スタイルとは当然ながら相容れない部分が多く、『働く』ということの意味の違いを痛感します。

私は、この方々が『絶対にできなかった』という年齢で、同じ回航に参加させていただきました。ここに居を移してから、あらゆる『我慢』に対し、次々と『けじめ』をつけていく、ことにしたのです。だから、同じ参加にせよ背景が違うわけで、相互にどういう思いなのかを知ることは実に刺激的でした。

正直に言って、私の人生はどんどんと『思い立ったが吉日』という方向に進んでいます。だから、我慢することはなんら意味がないという立場です。そんな立場の私であっても、この人生の大先輩方の『生き方』には、忘れていたかもしれない『それぞれの人にとっての本当の幸せ』のようなものを感じとるのです。時間を消費するだけの『余生』ではなく、これまでの『八分目の幸せ』を心のよりどころにした、今後に向けての『創生』といっていいのかもしれません。

今、団塊世代の定年がピークに達する中で、空前の山歩きブームなのだそうです。そこを歩く多くの団塊世代の方々に去来する思いは、『若かった頃の記憶』ではなく『まさにいまそこにいる自分と自然の関係性』なのだと、なんとなく腑に落ちました。



8 件のコメント:

  1. なるほど。我々は、何十年もの我慢を経ずして、大先輩が待ち望んでいたのと同じことを今体験できているって、改めてすごいことだと思いました。きっと我々の子供たちの世代は、さらに違う幸せの実現のしかたがあるんだろう、と願いたいです。パラダイス化して退化の道を歩む、なんてことのないように。

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  2. すぎさん、

    様々な生き方や幸せの掴み方があることに、私もはっとする思いでした。どれがよくて、どれが悪い、というよりも、様々な方法が共存できることが最も健全なのだと感じます。
    多様性を認めること、それこそが人の生き方に彩りを与えるのですね。

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  3. どんな人生も味わい深いですね。
    定年後の山歩き、、自然の中にいるとき 本来の自分をより感じることができるのかも、と思いました。

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  4. yukoさん、

    ほんとにいろいろな形があるのですね。
    その一言です。

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  5. 「思い立ったが吉日」。僕の人生もそっち方向です(^o^)/

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  6. ともさん
     ご苦労様
     普段では逢えない人間と貴重な体験、どうでしたか?
     僕は今回のレースに参加できて、すごくためになったと思っています。
     そしてみなさんに支えられて初めて自分のレースが成り立つとも、すごく思いました。
     蒲田で、じっくり飲みたいですね

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  7. サラリーマン時代にできなかったことというのは、戦後の日本をここまで復興させた先輩方の努力の裏返しにも見えました。
    我慢がきらいな僕ですが、先輩方には頭がさがります。

    TOMOさんが聞いた先輩達の言葉と同じような言葉を
    Morning Light の中で見たのを思い出しました。
    Roy Disneyが選ばれた若者クルーに話かけているシーンです。
    『自分が初めてトランスパックにでたのは40後半をすぎてからだった。 ここに参加している人のほとんどは30半ば過ぎ。』 そしてTPレースではいろいろなヨットから
    今回も参加したMorning Lightの若いクルーの顔を一杯みました。 僕らも参加できたことを活かして、繋げる何かを見つけなければと思っています。 

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  8. すぎさん、

    最近、思い立ったが吉日、でないと忘れっぽいので。。。

    sin31033さん、

    いやー、もっとお話したいですね!是非、東京にいったら蒲田にたちよりますよ。

    Hiro2.0さん、

    何が次に残せるのか、そろそろ考えて行動しなければならないですね。私の回航体験はある意味、この文章に集約されているところがあります。

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